スマートフォンに映し出されるおびただしい情報の数々。
大変便利であり私もその恩恵にこれでもかというほど浸かっています。
そんな文明の利器から哀愁感じる静かな漁村を発見したことはなんとも不思議な気持ちを湧き起こしました。
それまでにも別の漁村に訪れたことがありそういった場所は海風を耐え抜いてきた力強さを感じさせます。
こういった建築物を訪ねることに私の頭の中で漁村とはこういうところだとイメージが形作られていきました。
そして今回の訪問ではその蓄積していったイメージを壊す旅となりました。
着いた瞬間からのどかな漁村だと感じる静けさに包まれています。
ここに到着する前、車を走らせていた時には宍道湖と中海は荒れ狂っており、白波があちこちに・・・
それを目にしていたために水域がつながっているとは信じがたいものでした。
以前に訪れた漁村である佐渡島の宿根木はアクセスしやすく、それなりに観光客が歩いていました。
しかしこの美保関は目的地に近づく度に交通量は減り道も狭まります。
そして道を一度間違えUターンしてやっとの思いで到着です。
海に面する駐車場から歩くこと100m、海から山に向かってこのような鳥居が姿を現しました。
この時私は困惑してしまいました。
あれ?漁村に来たはずなのにどうして神社が・・・?
村に神社が存在することは珍しくありません、しかしそれにしてはあまりにも規模が大きいのです。
こんなに大きな神社が人の少ない小さな村にデン!とそびえているとは想像を越えています。
また道を間違えたのかも・・・と不安が募りつつも鳥居の先に続く拝殿に圧倒されて計画変更と考え進みだした時でした。
立ち止まって右を向いた時にこの門を見かけ、奥まで覗いてみました。
中にも入ることができるようでちょっとかじるつもりで中へ足を踏み入れることにします。すると・・・
この風景を目にした瞬間に良かった・・・と全身の力が抜けていったことを覚えています。
やはりここは正真正銘の漁村であり、私の選択は間違っていませんでした。
入口が特殊なので勘違いしてしまったのです。
その光景はこれまで募らせてきた不安を払拭するには十分でした。
昔に建てられた家々に石畳、左右に飾られる観葉植物の数々、これらが哀愁を感じさせます。
ほかの伝統的な家々を見た時、普段とは異なる世界に来たんだと感じさせます。
ところがなぜでしょう?
ここ美保関に限っては実際には存在しないにも関わらず、親戚の家に遊びにきてのどかな環境に浸る、そんな感情が作られるのです。
この村に漂うにおいがそれを加速させます。
まるで後ろから誰かが優しく抱きしめてくれている、そんな気分です。
こんな感情が作られる場所が本当にあるなんて思ってもみませんでした。
物語に出てくる表現が現実世界の出来事をもとに作られているとは知っていましたが肌で感じてわかったのは初めてのことです。
しばらく村を歩いていると地元の高齢女性が私に、近くにあるお寺に寄って行くと良いとお話しされました。
これは良い情報を聞きました、住民の方に感謝して村の脇道を70mほど歩いたら到着です。
整備された白い石畳とその奥に広がる立派な寺院は訪れる人々を圧倒させます。
一方でこういった地衣類やコケの生える時間を感じさせるお寺も味がありますね。
こうした風景を見ると自然と調和、溶け込んでいると感じるのは私だけでしょうか。
そしてお寺の右側にはブドウと思われる蔓が栽培されており、極々小さな緑色の果実が育っていました。
収穫はいつになるのでしょう。
寺院の次は神社に参拝です。先程勘違いしたこの美保神社に向かって鳥居をくぐります。
期待以上の風景を見せていただいた感謝を込めてお祈りします。
門にかかるしめ縄を目にして感じたのは、この漁村を訪れる2時間前に足を運んだ出雲大社に似ているということです。
神社の雰囲気も出雲大社を思わせます。
この後、村の張り紙で知ったのですが美保神社は出雲大社の姉妹神社でした。
通りで似ているわけです、2時間前にその出雲大社に行っていたこともあってこれも不思議な縁ですね。
御祭神は三穂津姫命、事代主神の2柱です。
三穂津姫命は出雲大社の御祭神である大国主神の最後の后で人々に食糧を分け与えたと伝えられます。
そのことから主に五穀豊穣の守護神として信仰されています。
広大な出雲平野の豊かな農場を支えておられるのですね。
事代主神は父の大国主神の最初の子であり、えびす様として世に知られています。
この漁村という環境にピッタリ合うのでしょう、こちらも篤く信仰されています。
拝殿や本殿の形もよく似ているので出雲大社では厳重に保護されて見渡すのが難しい区間を眺めてみましょう。
出雲大社では塀に囲まれて見ることが難しかった拝殿の全容です。
本殿に関しても至近距離で眺めることが出来ました。
この要塞の中を探検してみたい気持ちもありますが、そんな無礼な行為は慎まねばなりません。
そして参拝。2柱の神様に感謝を込めましょう。
参拝の後は近くで偶然見つけた温泉に浸かってベタついた体を洗い流しました。
これですっきりとした状況で次の目的地へと向かうことができます。
今までの訪問先の中でもトップクラスの満足度です。