新潟県に存在する数少ない重要伝統的建築物保存地区、通称重伝建に指定されている漁村を目指して両津港から南西に進みます。
佐渡島は暖かい対馬海流と冷たいリマン海流のぶつかる場所にあります。
そのため、暖かい海と冷たい海の魚が合流する地点なのです。
両方の魚が泳ぎまわる良質な漁場が多く今回訪れる漁村、宿根木もそういった環境に存在します。
どんな光景なのでしょう、到着する前から妄想が膨らみます。
そして満を持して到着です。やはり写真と実際に見物するのは違います。
一番イメージとかけ離れていたのは漁村が位置する場所です。
それまで広い平地にあるとばかり思っていたのですが、駐車場から降りた直後にその認識を改める時がやってきました。
写真で眺めるよりも明るい色をしていました。
そして開放感があり、思っていたよりも手軽に歩けそう、というより実際に歩くことができました。
多くの古い町並みがアーケード商店街のように左右に家があり、真ん中に人や車が通れるほどのスペースを見かけます。
しかしここは違いました。
このとがった家の影響で迷路だと勘違いしてしまいます。
これもまた、歩いている途中に気付いたことです。
やはりここは歩くことに特化した場所だと思います。
こんなところに自動車は入って来られません、そんな心配は無用です。
そういった自動車が入って来られない環境というのも保存された要因の一つなのでしょう。
そしてこの長い年月、火災に巻き込まれることなく生き残ってきたことには感謝の気持ちでいっぱいです。
私も火気の扱いには注意せねばなりません。
この漁村はそれなりに観光客が訪れるのでしょう。
村の中には一軒のカフェらしきものが存在し、私はそこで売られているチャイをいただきました。
歩き疲れた時にちょうど良いですね。
漁村を何周かした後、村の入口付近にある丘へ続く階段を登ります。
ツバキの木を始めとする冬でも葉の落ちない、常緑樹が越後国とは違うところに来た気持ちを増幅させます。
丘の上に到着して目先を坂道から漁村の方へと変えます。
やっぱり狭い、限られた土地の中で家屋が密集している姿がよくわかります。
これだけ密集していれば確かに車の侵入はできません。
江戸時代の中頃には佐渡島の富の3分の1を占めていたといいます。
こういった昔ながらの集落は貧しいもの、痩せた土地で細々と暮らしてきた人々だという先入観がありました。
それ故にこの村が裕福だったと知ったときはまた私の固定観念が打ち破られた瞬間となりました。
こうやってどんどん視点を増やしていけば訪問がますます面白くなるに違いありません。
ワクワクしますね。ほかにもこの漁村が栄えた理由である北前船の舞台に訪れてみようと思います。