訪問日:2024年9月28日
安房峠を越えて遂に松本盆地まで下りることができました。
長野県までやってきたのでどこか巡りたい・・・
そんな時に思い浮かんだ場所は松本市から北へ進むと現れる、青鬼集落(あおにしゅうらく)です。
この集落は松本盆地を北上して姫川水系に入り、さらにそこから東の山間部に進んだところに存在します。
松本盆地のような広大な土地とは正反対の平らな場所はほぼない、気を抜いていると通り過ぎてしまう場所にあるのです。
実際、私はナビの通りに進んだつもりが曲がり損ねてUターンするハメになりました・・・。
ー収穫の季節を迎えた白馬村ー
松本市・安曇野市の盆地は広くて交通量も多いためになかなか前へは進みません。
先へ進むスピードが上昇するのは大町市を抜けた辺りからです。
盆地はまだ続くのですが幅が狭まり交通量も減るので周りを見渡す余裕が生まれます。
そして仁科三湖を通り過ぎて標高を稼いだ後、流れる川の方向が逆となったところで私は白馬村に突入したのです。
稲や蕎麦の畑広がる白馬村
白馬村もまた秋を迎えており田んぼや畑には実った作物がずらりと並び、食欲をそそられます。
今回向かうは農村の原風景を感じられる場所なのでどれだけ美しい景色が待っているのか、到着する前から期待が高まります。
ー目的地はどこ?交差点に翻弄される運転手ー
看板が見当たらない!
そんな秋の実りを楽しんでいた私ですが苦労したのはここからです。
知名度はあまり高くないのか、目的地を知らせる看板を見かけません。
ナビの通りに進みますが一向に看板を見ないので本当にルートは合っているのか?
通行止めじゃないか?など、徐々に不安が募ります。
狭くて急勾配のハラハラする道路
写真は何とか交差点を曲がれた後のものです。
信号は存在せず60km/hで走っていればやっと現れた看板も見逃してしまいます。
今回私はナビの通りに進みこの付近だと分かっていたため何とか曲がることが出来ました。
「もっと分かりやすくしてくれ・・・」と頭は悲鳴を挙げていました。
交差点を曲がれた後もまだ安心はできません。
これまでのように50km/hも60km/hも飛ばすことはまず不可能な狭い道が続くのです。
運転技術の未熟な私は目的地に着くまでの数km、ずっと気を抜けませんでした。
カーブミラーを確認しながら対向車が来ないか見渡す行為の連続。
急勾配の坂ではアクセルをべた踏み・Lギアに切り替えを繰り返した先に目的地へと辿り着きました。
ー昔話の世界にお邪魔します、歩いて回れる青鬼集落ー
視界が開けて見渡した集落
狭い道を恐る恐る進んで行った先にようやく集落の駐車場が姿を現しました。
訪問客用の駐車場には私以外に1台の車両が停まるのみ、やはり知名度は高くないようです。
料金は500円、ポストに入れていよいよ観光です。
暑さが収まり快適に歩ける集落
集落付近では暑さはすっかり消え去り快適な気温の中で歩くことができました。
ここは冬に深い雪に包まれる地域ですから束の間の過ごしやすい時期といえるでしょう。
以前訪れた富山県南砺市の菅沼集落と比べても秘境という言葉が似合う場所です。
静かな集落を歩いて回ることで普段の雑念から離れることができました。
家屋はトタン屋根ですが家の形や周りの風景がそれすらも面白さに変えてしまうのです。
それは家屋に近づくとより感じることができます。
ゲームの世界観を思い浮かべる大きな住居
家屋は近づくと思った以上に大きく1軒だけでも何かの集会所と勘違いするほどです。
この大きさがトタン屋根だということを忘れさせる一因であることは間違いないでしょう。
ただの家ではないと脳に刻み込まれるのです。
そしてここを歩いている最中にはそれまでとは全く異なる時間の流れ方を感じます。
ゲームで各ワールドをタッチして世界へ入るのと同じように、私も青鬼集落というワールドに入り込んだのです。
これはワールドを抜けだすまでの間にしっかりと目に焼き付けておかねばなりません。
家屋を眺めて喜びに浸ったところでそれをさらに深く味わうために集落全体を見渡せる展望スポットへと移動しようと思います。
ー徹底的な柵に緊張が走る!野生動物が出るかもしれない展望スポットー
ここで引き返そうとも考えた・・・防止策の向こう側
この柵の向こうに集落を一望できるスポットが存在します。
一見すると進入禁止にも見えますが自由にお入りくださいと記されていました。
この柵の様子から、柵の文字を信じられずにしばらく立ち往生していました。
そこで畑仕事から帰ってきた地元民に尋ねたところ、入っても平気だと返ってきたので間違いありません。
これで罪悪感なく踏み入れることが出来ます。
しかし脇にある柵に触れることは禁物、なぜなら触れた瞬間に私の体中に電気が走るからです。
痛い目にあうのは嫌なので素直に従います。
やはりのどかに感じる田畑の風景
進んだ先の田畑はまさに収穫の真っ只中、実った穂や野菜、そして木の実が私の目を楽しませます。
そしてこうした風景に目が惹かれるのは野生動物も同じで食料確保へとやってくるのでしょう、電気柵で固められているのも納得です。
展望スポットからの眺めは素晴らしいもので収穫を迎えた田んぼと静かに佇む家屋たちが昔話に登場する世界そのものです。
この場所から「昔々あるところに~」と語りかけてきても全く違和感がありません。
最初は斜面だった場所をこうやって棚田に変えた先人の意思と知恵には頭が上がりません。
こういった人間の知恵を得られれば感性も豊かになること間違いなし、羨むばかりです。
ー自分の歩く音以外聞こえない、不気味なほどの静けさに包まれる神社ー
最後はこの集落の脇に位置する神社を見て終わりたいと思います。
集落から神社に続く階段は石をはめて造られた単純なもので段にはコケや草が顔を出しています。
こういった姿を見ると生き物ではないものに対しても何か生き物らしさを見出してしまうのは私だけでしょうか?
現地マップには徒歩15分と記されており登る前から足がすくみましたが実際は5分で祠が見えてきたので体の緊張がほぐれました。
しかし頭の緊張はほぐれるどころかますます強さを増します。
徒歩5分とはいえ野生動物が現れるには十分すぎる広さなのです。
茂みからカサカサ物音でもすれば途端に恐怖に包まれるに違いありません。
ところが動物はもちろんのこと、鳥の鳴き声さえ全く聞こえません。
そのあまりの静けさに自分が出す足音が周囲に響き渡り、木霊した音を動物と勘違いして怯えるほどです。
自分の足音だと気付くために足をゆっくりと前に出しては立ち止まる、これを繰り返して納得させました。
これほどの静けさに何か結界が張られているのか?と考えずにはいられませんでした。
ここまで安全に登って来られたことに感謝をします。それを示すためにお賽銭を入れて参拝、どうか帰りも見守りください。
見下ろすとやはり苔むした世界、植物の生命力を思い知らされます。
確かにこういった隅々まで植物で覆われた幻想的な世界観は人間では到底作れはしないでしょう。まさに人知の及ばない力です。
今後はもっと自然に関する知識を深めて、人間はそういった環境でどう知恵を絞り生きてきた(生きている)のかを知りたいです。