一面緑の山、優しい川のせせらぎ、それと一緒にさえずる小鳥たち、
そんな日本の農村を浮かべた時に真っ先に思い浮かべるのが茅葺きの屋根の家ではないでしょうか。
今回はそんなパッ!と思い浮かべる農村の風景を見に白川郷・五箇山の集落へと足を運んできました。
まず自動車で向かったのは五箇山・菅沼の集落、富山県西部、高岡市を流れる庄川の上流に位置する小さな集落です。
国道156号を南下していきます。
高岡市からしばらくはチューリップが有名な砺波平野を駆け巡り、平野の雄大さに入り浸っておりました。
それから時間が経ち平野部の末端、城端を過ぎた頃に景色が一変します。
ここから先は庄川が削った山の脇を通る形となり、いよいよ人を寄せ付けない場所に入ってきたんだなと実感しました。
道路の下を眺めてみるとエメラルドグリーンの色をした川の水がダムのように続いているのが確認できました。
こういった風景を見ると私は人里離れた環境に来たと感じます。
川の近くを登っていくことおよそ1時間、ついに菅沼集落の案内図が見えてきました。
世界遺産に登録されている合掌造り集落は3つあります。
菅沼地区はその中で最も規模の小さいものであまり観光客もいないため素朴な風景を楽しめると聞いてやってきました。
一体どんな風景が広がってるのでしょう。
観光地化されていない素朴な風景ってどんなところだろうと期待を膨らませながら集落近くの駐車場に車を停めます。
(厳密に言ってしまえば駐車場が存在する時点で多少の観光客が来ている証拠なのですがそれでも時々観光客をみかける程度でした。)
菅沼集落は川の岸に作られた平らな土地に存在しており、山奥の割には広い場所だなと思ったのが率直な感想です。
その平らな土地に家は9軒建っています。
家と家はアスファルト化されていない道で繋がっており周りには田植えの終わった小さな苗が一列に並ぶ姿を見ることができました。
雪深くなる地域とはいえどもこの時期になると周りの草木は緑を生やし、生命力を感じさせるものとなっていました。
こちらも不思議と力がみなぎる気がします。
ところで、茅葺きの屋根を見上げると大きな窓が2階、3階と存在します。
中に入ってのぞいてみると明るい光が差し込んできます。
この窓がある部屋では昭和の中頃まで蚕を飼って保管しておく大切な施設だったようです。
蚕から取った繭を紡いで絹とし、それを先ほど通ってきた砺波平野の人里の方へと売って収入を得ていました。
こうした事実を知った時、山奥の集落に対するイメージが変わったのを今でも覚えています。
それまでこの土地に住み着いてから秘境と注目されるまでの長い長い間、
集落の人間以外とは全く関わりを持たずに生きてきたという認識をもっていたからです。
人里離れた集落とはいえ外部の人間とやりとりを行う人間のネットワークの広さに度肝を抜かされました。
今後、こういった集落を見る目が変わることでしょう。